留学道⑮‐留学と就職-働くということ
あけましておめでとうございます。新たな1年が始まりましたね。
ここまでの記事で、まずは留学の1年のサイクルを元に心の持ちようを、そして、そこからさらに進めて人生論のような、少し抽象的なお話をさせて頂きました。ただ、夢だの使命だの、自己実現だのと言っても、それはあくまで自分の生活や基盤がしっかりあればこそ。この世の中で自立して行きていくためには、働かなければいけませんよね。
ですから、今年度は、再度原点に戻り、働く、ということについてお話をさせて頂けたらと思います。
「働く」ということ。既に社会人を経験された方も、今から卒業後の進路を考える方も、ではそれを一言で表してください、と言われると難しいものです。色んないい方ができると思いますが、まず、前提として、
【働くこと】=【お金を稼ぐこと】だと言い切ってしまいたいと思います。
・・・だけど、お金って言うと生々しい気がしますよね。
私は働くことで、お客様の笑顔が見たい!社会貢献がしたい!周りを幸せにしたい!
分かります。とってもよく分かりますよ。
それでは誤解のないよう補足しますね。
【社会】を「あなたの体」
【お金】を「食べ物」
と考えるとよく分かります。あなたの体を健康的に維持していくためには積極的に、栄養を取らないといけませんよね。その食べ物を得るために、動くことがつまり、働くことです。働くことはあくまで手段なのですね。
手段としての【働く】の内容が今の世の中、どんどん変わって来ています。昔であれば、作業(例えば穴を掘るとか、組み立てるとか、データを入力するとか)が【働く】ということでした。ですが、今は、そういった仕事の多くはコンピュータに取ってかわられていますね。それから、知識を蓄積することも【働く】でしたね。これも同じく、データベースというものができて来ました。それから、モノを動かすなんかもそうでしょうか。これも、デジタル化が進んできましたね。人自体の移動も不要になってきましたよね。
「私は、社会の部品・歯車となって、何も考えず、自分でなくてもできる仕事を、ただ淡々とやるのが夢だ」という方はなかなかいないと思います。やはり皆さん、他人の笑顔のために、人のために働きたいと思っている。そして、今の世の中は、そういう意味で、それが実現しやすい世の中になってきている、とすごく思うわけです。
その上で、どうしてこんなまだるっこしいことを言うかというと、手段を目的化しないでほしい、ということなんです。
【お金を稼ぐこと】がまず目的。だって、食べ物(=お金)がないとあなたの体(=ひいては社会)が死んでしまうから。
【お金を稼ぐための手段】が、人のためになることをすること、お客様のためを思ってすることだったり、社会貢献だったり、です。
もし、とっても世のため人のためになって、みんなが笑顔になっているけれども、全くお金を作っていないとしたら???
それは、あなたが、断食でフラフラになりながらボランティアをして、「いや、でも私は人を幸せにしているのでこれは仕事です!」と言っているようなものです。手段が目的になってしまっています。
働き出すと、やりたいなと思っていた仕事でが決して楽しいことばかりではないことに気づきます。毎日の仕事の中では、「締め切り」「販売目標」「ノルマ」があり、なんだかなー、結局会社ってお金かよ~と思ってしまうかもしれないんですが、正直、そうです、それで正しいんです。なぜなら会社は利益を最大化することで、社員や社会に還元し、「より多くの人の幸せを創る」から。
そう、あなたが最初に思ったことと、結論は同じなんです。
全ての仕事は、人や社会のために存在しています。手段と目的さえ混同しなければどちらも正しく、どちらも両立します。
皆さんが、留学を通して得たことを使って、社会貢献として色んな仕事をしてほしい、輝いてほしいと心から思います。
ですから、その第一歩としてまずはこの前提を知っておいて頂けたらと思います。
なぜその話をするのかというと・・・
去年からの円安の傾向も受けて、日本でも海外就職についての情報が取り沙汰されているようです。海外だとこんなに稼げる、日本の●●という仕事の平均年収はいくら、だけど海外なら2倍に!なんて心躍る記事を見た、と言う方も多いのでは。また、ワーキングホリデー以外にも、Co-op留学という留学形式がずいぶん一般的になり、カナダのカレッジを卒業して自由に働けるワークパーミットを手に入れる方もいたりして、「海外で働く」ことがより身近になった気がします。
もし、同じ仕事をして、より多くのお給料がもらえるのならそれは確かにとても嬉しいことで、海外就職には夢があるように感じます。ただ、ここまで話して来た通り、働くこと=自己実現=海外での経験、というように手段と目的をイコールで混同したまま海外就職に乗り出したり、日本の感覚のままで北米で就職活動/就労をして、躓いてしまう方も多くいるのかな、と思うからです。
日本人は、「お金がいくら稼げるか」を基準に仕事を選んだり、面接などの場で「お金がいくらもらえるか」に突っ込むことをよしとしない、「御社の規定に従います」と会社任せにするという傾向がまだまだあります。また、経験がないうちはまだお金をもらってはいけない、と謙虚な方も多いです。続けて、在席中も、自身のタイトル・業務内容については上司や会社の判断に従う、結果を出して評価してもらう、という姿勢の方も多いでしょう。
一方で会社側も、一度人を雇うと、育てる・面倒を見ると言う気質はまだまだあります。いや、日本にはブラック企業もありますよ、というお声もあるかと思いますが、ブラック企業も「低賃金でも仕事があるだけ良いじゃないか」と歪んだカタチではあるものの、会社は与える側であるという前提がある点では日本式とは言えます。
それ自体は決して悪いことではないのですが、北米の就職は異なる、ということは知っておくと良いと思います。ただ、北米の就職と言うと、アメリカのイメージが強いからかガツガツと交渉をかける、結果が出ないとクビなど、徹底的な成果主義をイメージする方が多いですが、決してそんな極端な話ではないので安心してくださいね。
意識しておいてほしいのは3つです。
①(自分が)会社に生み出せる具体的な価値を語る
日本の就職では、人柄やコミュニケーション能力などうまくやっていけそうな人材かというところを見ることが多いですが、カナダの面接では、「あなたは会社やチームに何ができるか」という能力・スキルの部分を非常に重視しますし、それをハッキリと聞きます。給与の対価は、具体的に会社にもたらす価値(お金・利益)と考え、それを買ってください、とアピールする場となります。そのため、「チーム内で縁の下の力持ち的な役割が得意です」「企業理念に感銘を受けました。」というような部分を一番に熱を持って語っても、会社に求められているものとずれてしまいます。英文レジュメには一番最初にObjectiveとして「自分はどんなバックグラウンドやスキルがある人間で、どんな目的を持って職探しをしているのか」ということを書くことが多いのですが、そこに「業界経験がしたい」「お客様のサポートがしたい」「会社に貢献したい」など主観的、もしくは抽象的な目的を書いてしまう方が多いのですが、それ以降の部分を読んでもらえない原因にもなります。
②自分のキャリアパスは自分が持つ
日本でも今はジョブ型雇用というアイディアも入っていますが、まだまだ新しく、就職後に部署・配置転換を経験して来た方は多いと思います。また、転職エージェントはじめ、無料のキャリアコンサルサービスも多いため、自分がキャリアパスを考えるというよりは、会社に合わせて、もしくは、モデルケースを見てそれに合わせるということも多いでしょう。例えばやる気の表れとして、「なんでもやります!」と言っても、裏を返すと「どれが得意か分からない」とも取れるため、アピールにならないですし、「御社で修行させて頂きます」「業務を学ぶ中で考えて行きたいと思います」という謙虚さは、カナダでは「おいおい、うちの会社を職業訓練所にしないでくれよ」と逆効果となることが多いです。あるカナダの学校の起業家養成コースでは、プログラムの後の実習で、そのままトップクラスのポジションに抜擢され、一旦予定していた起業を置いておいて就職する方も少なくないそうです。実習ですから、当然、会社も本人も双方が、「この会社に就職して、長期貢献すること」を目的としていないにも関わらず、です。終身雇用ではないからこそ、ギブアンドテイク、求職者と会社とに対等な関係がある一例かと思います。
③自分の評価をするのは、自分
日本でも人事による評価制度や、評価面談がありますが、もちろんこちらにもあります。Twitterなどの大量解雇が日本でもニュースとなりましたが、残念ながら、自身の能力不足に限らず、会社都合も含めて、北米では”解雇”はより身近な存在です。①②にも繋がりますが、だからこそ、自分の仕事・スキルはこれで、どの会社でもだれが上司・同僚でも発揮できるものを持っていることが必要です。去年は、日本ではまだ大学生の方ですが、Co-opの就労先で結果を数字で出して、Probation(試用期間)を交渉し、短縮してもらった、という方がいました。(正式採用後は法律に基いて解雇手当なども出るし、会社の福利厚生などにも組み込まれる)。ポジション/タイトルの変更を自ら申し出て、正式に変えてもらった、もしくは作ってもらって名刺にも入れてもらった、という方もいます。また、まだやったことのない業務を「できます!」と言い切ってから、オンラインコースを取って勉強しながら遂行したというツワモノもいます。年齢・職種に限らず、誰かの評価を待たない、という姿勢はとても大事だと、カナダで就職をしている皆さんから教えられます。
日本式の就職は、やりがい搾取という言葉も未だに使われるように、お金以外の部分、つまり仕事の社会貢献や社会的な意義・会社への忠誠心・他人からの評価・個人のやりがい・チームワークなども重視する傾向があります。それが決して悪いわけではないですし、決して北米の就職形態がすべて良いわけではありませんが、もし仮に、日本での就職を経験した上で北米就職を意識するのであれば、この違いは少し頭に入れておいていただけるといいのかなと思います。
2023年、より多くの日本人が海外で活躍できるよう願っています。
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