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留学道⑰‐留学と就職-カナダでのスキルの考え方

カナダでの進学や就労を考える方から、「どんなスキルを身につければいいのでしょうか」というような質問をいただくことが増えてきましたので、今日はそちらをテーマに発信してみようと思います。

皆さんは、「ソフトスキル」「ハードスキル」という単語は聞いたことがありますか?

ハードスキルで挙げられるのは、分かりやすいところで言うとプログラミングができるとか、デザインができるなどが良い例になります。レジュメなどに書く際には、このように分かりやすいハードスキルがあるとアピールがしやすいですから資格を取ったりすることに一生懸命になってしまう人もいますね。また、特に進学など受講するプログラムを検討する際には、「卒業するとどんな資格が取れますか」「このプログラムを終えると、どんな仕事につけますか」と、プログラムの終了=1つのスキルの獲得、と考えてしまっている方も多いです。

と言うのも、日本ではとても分かりやすく、専門学校でこのプログラムを受けて、試験を受けると認定証がもらえるので、それがある特定の仕事の必須条件になっている、というようなことが多いですよね。まずはそのように最低限の知識を学校で学んできた方を、一旦まっさらな状態で会社に入れ、先輩がその会社のやり方や、会社が使っているソフトウェアなども含めてトレーニングしてくれる、という仕事の覚え方を想定する方も多いでしょう。

カナダの場合は、基本的にプログラムの卒業それ自体や資格そのもので仕事が決まるということはほとんどありません。また、プログラミングやデザインなどの仕事も、学校は出ただけで実務経験のないまっさらな方をわざわざ雇おうとする会社もあまりありません。「じゃ、実務経験を積む場所がないじゃないか!?」と思われると思いますが、まさにその通りなのです。

こんな状態なので、若い方がなかなか労働マーケットに入っていけない、大学などを卒業してもコーヒーショップのアルバイトで食いつないでいるというのはカナダでも一部、社会問題ではありますが、とは言え、現状はカナダでは前提として「具体的な実務ができないと雇ってもらえない」と考えて頂くと良いと思います。

ここに、日本人の留学生がカナダで進学・就労を考える場合との、大きな齟齬/ギャップがあります。

「就職しやすいから、今、需要の高いプログラミングを学ぼう/デザインを学ぼう/資格職につこう」というように、自分にまだ向いているかもわからない、全く新しいスキルを学ぶプログラムを選んだ場合、多くの方はプログラムを終えるとある程度、基礎は身についたので仕事に就ける、と考えてしまいます。ただ、実際にはプログラムで学ぶことはあくまで概要や、一般的な情報ですので、母国語でもその職務経験がない場合は、卒業時点でも専門スキルと呼ぶほどに洗練されたものではありません。

これらハードスキルは、実務をこなしながら磨いていく必要があるものなので、学校やプログラムでゼロから学んで、なおかつ、カナダで外国人としてイチから実務を勉強させてもらう、という想定は、かなりハードルの高いことになります。

つまり、資格・トレンド・イメージでプログラム選びをしてしまうのは、実はとてもリスクが高いと言えます。

 

 

続けて、ソフトスキルというのは、コミュニケーション能力に代表されるよう、誰かに教わったり系統立てたものがあるわけではない、人間的な能力のことです。

北米の就職は実力主義!と聞かされてきた方も多いと思いますが、決して、カナダの会社でみんなガツガツと毎日競争しながら仕事をしているわけではありません。カナダ人は、移民が多い中で、できる限り波風を立てずに社会や生活を成り立たせていく必要がある文化から、比較的日本人と似て、いわゆる「空気が読める」人たちでもあります。逆に言うと、会社の中でも、もちろん個人としての独立して仕事ができるというのは前提の元、周りと協調してチームワークで仕事ができる人材というのもきちんと評価されます。

ただ、ここで言う「空気を読む」「周りと協調する」というのは、決して同調圧力に負けて黙っているとか、揉めないよう我慢するとか、ということではありません。

例えば、英語圏ではCritical Thinkingができるか、ということは、学生の評価でも重要視されますし、社会人になってからもとても大事なソフトスキルの一つです。日本語で訳すと、”批判的思考”と、あまり馴染みがなくよく分からない単語ですが、論理的・客観的に物事を理解し判断する力のことです。カナダの学校のテストでは、穴埋めではなくエッセイなど文章で自分の考えを書く課題が多いのですが、この際、1つの問題に対して多面的に、論理的なアプローチをするような練習をたくさん積んでいます。その結果、大人になってからも、チームの中で議論が煮詰まって来た空気を感じた時、他の人が解決の糸口がわからない時に、独自の目線や考え方を持って意見を言うようなことができるようになります。

特に20代後半や30代・40代から進学やカナダ就職を考える方は、「もう年齢も年齢なので、カナダでやっていけるのでしょうか」と心配されることが多いのですが、リーダーシップを取っていく力、会社の中で問題解決をしていく力、これらは、英語という第二言語になった途端にできなくなるということはなく、そのままご自身の大事なスキルとして使えることも多いです。

日本での職務経験は、日本語なのでカナダでは全く役に立たないかと言うとそうではなく、日本で仕事をした経験の中でご自身が得意だったことも、一つアピールになることは知っておいてください。

ハードスキル・ソフトスキルとはまた別の区切り方で、「コアスキル」とか「ディベロップメントスキル」などと言われるのが、社会人として通用するためのスキルです。報告書を作るのが早い、プレゼン(人前で話すこと)がうまい、タイピングがめちゃくちゃ早い、一度会ったら名前と顔を忘れない、なんてスキルは、日本でもカナダでも重宝されるスキルになるでしょう。今後は、AIなどにプロンプト(指示)を出すのが上手い、なども社会人のスキルの一つになりそうです。

この、社会人としてのスキルは、業務上で有利な条件を引き出してくる交渉力、クレームを笑顔で切り抜ける上に顧客の信頼まで勝ち取ってしまう能力、社内に仲間が多く企画を通すのがうまい能力・・・などなど、どんどん細分化して、レベルを上げていくスキルになります。実は30才~40才まで、厳しい日本の仕事環境の中で頑張ってきた方は、実はこの社会人としてのスキルが非常に高いということもあります。特に、部下を持つなどのマネジメントの経験をしている方は、問題解決能力が高かったり、日本の学校ではあまりやらなかったCritical Thinking的な考え方を、社会人になってからしっかり身につけてきた方も多いです。

「日本でその分野で学校を出ているのだから(実務経験があるのだから)、わざわざカナダで学び直すよりは新しいことを学びたい」と考える方は多いですが、カナダでの就職活動や、カナダでの就労や移民を目標とした進学を考える時は、付け焼刃的にハードスキルにばかり目をやるのではなく、ご自身が日本でやってきたスキルを伸ばす、その延長線上にあるものを選ぶような考え方もとても重要です。

 

 

続けて最後に、ベーススキルと呼ばれるスキルの考え方についてもご紹介しておきます。

最近は、大学生などまだ職務経験のない方が、カナダでインターンシップの経験をするためにCo-opプログラムという留学の形式を選ぶ方も増えていますね。そういう方は、社会人としてのスキルはまだまだ弱いですし、ここまででお話してきた通りハードスキルを短時間で身につけるのはとても難しいです。また、カナダでは就職しないけれども日本で帰国したらすぐに就職活動という方もいらっしゃるでしょう。まだまだ新卒採用がある日本ですが、今後もっともっとジョブ型採用や通年採用で、いわゆる「新卒カード」の価値が下がっていき、今ご紹介したカナダのような就職マーケットになる可能性もありますよね。

「じゃ、就職できないじゃん!」

と思われるかもしれませんが、実際には、学生であってもカナダで立派にインターンシップの仕事をやり遂げ、「日本で新卒就職するよりもよっぽど良い給料をインターンでもらっているので、帰りたくない」とまで言う方もいらっしゃいますし、別にアルバイトやインターンの経験などなくても就職活動できちんと評価される方はたくさんいます。

これは、そもそものベースとしてのあなたが持っているもの、例えば、価値観や考え方だったり、ベースとしての対人能力だったりが評価されています。対人能力?さっきソフトスキルにコミュニケーション能力ってあったよね?被ってる?と気づかれたかもしれません。「人材としてのあなたの持つスキル」を、積み木ブロックのように、あっちにくっつけてみたり、こっちにこれを乗せてみたりとするものではなく、土台から1つ1つ丁寧に積み上げていくピラミッドを想定してみてください。ここまで話してきた「スキルというもの」が、それぞれ別々に独立して存在しているのではなく、全て、繋がっているし、延長線上にあるのです。

 

 

最初に戻って、「どのようなスキルを身につけたらいいですか?」の質問には、まず、「ちなみにあなたはどのようなスキルを持っていると思いますか?」と質問を投げ返すことになると思います。大学生の方であれば就職活動の時に自己分析をすると思いますし、転職活動や社会人経験者の方はキャリアの棚卸しというような言い回しを聞いたことがあると思います。これは具体的に何をしているのかというと、「私はどんなスキルを持ってるのかしら?」を言語化する作業になります。

ここまでの話の通り、スキル=分かりやすい資格やテクニック、専門知識ではありません。

「自分は今まで日本でずっとセールスをやっており、資料を作ったり、人と交渉したり、プレゼンしたりと言う作業はとても得意だ。ただ、事務的なことや会計、法律など仕事をする上で必要な知識やスキルを磨く機会がなかった。カナダで就職をするにあたって、多分自分のコミュニケーション能力はきっとこのまま活かせるだろう。だけど、英語は第二言語になるのだから、それだけでは少し弱そうだ。どんなスキルが足りないのだろう?」

①Businessプログラムの中でも、Business Administrationを選んで、少し系統立てて学んでみようか。英語の能力を磨くのであれば1年のプログラムでは少し短いので、2年学んでみるのが良いかもしれない。

②セールスの能力は確かにあったが自分が一番輝いたのは、データ分析だった。どの商品が売れているか利益率が良いかなどのデータから読み解くのは好きだったし、チーム内でも他の人より得意だったと思うので、磨いて行きたいスキルだ。Business Analiticsというプログラムはどうなんだろう、面白いのではないか。

前提条件は同じでも、①②のどちらが自分なのか、答えを知っているのはあなただけです。よく、「ITが今は需要が高いと聞いた」「ホスピタリティだと食いっぱぐれがない」「デジタルマーケティングが就職しやすいそうだ」などのネット上の情報などをたくさん見て、選択肢③にこういった「あなた」のスキルセットには全然関係のない一般論からプログラムを選択肢に入れてしまう方がいます、多くの場合それは、単語として何か分かりやすいハードスキル・専門知識的なものであることが多いです。社会人から進学や留学を考えている方は是非この辺りの考え方を参考にしてください。

 

 

高校卒業から来る方や大学生の方、まだ20代の方は、それでも、何を学べばよいか迷ってしまうことも多いかもしれませんね。再度、忘れないでいただきたいのは、あなたという人材を表す図は「ピラミッド型」であるということです。先ほどから繰り返す通り、社会人として必要なスキルや専門的なスキルというのは、社会人人生を通してずっと磨き続けるものになります。まだ20代前半などの若いうちに決めたプログラムや、その時に得たスキルが、今後何十年という社会人人生の全てを決めてしまうということはありません。

また、AI時代でこれだけ世の中が変わっている中、今あるスキルが10年後、20年後、同じ形で、もしくは同じ価値で残っているとも限りません。「今は」必要ないとして見送った専門スキルが、今後致命的にあなたという社会人にとってマイナスになることも、たぶんありません。例えば、ウェブサイトを作るのは一昔前は専門知識であり、誰にでもできるものではありませんでしたが、今は、システムを自分で組み上げなくてもWebサイトやその記事を作れるサービスがいくらでもあります。当時、専門スキルとしてのウェブ知識を身につけた方は、今は、また別のスキルの獲得のために動いているでしょう。

ピラミッドは、土台を大きくすればするほど高く、大きく、安定した形になりますよね。

人生100年時代と言われていますし、多くの方がおそらく何らかの形で、50年・60年近く仕事をする時代になると思います。時代や、他の人の評価に翻弄されてプログラムやスキルを考えるのではなく、常に自分を中心に、1つ1つ、石を積み上げるような気持ちで、スキルを磨いて行ってください。

 

 

 

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