vol.13 アフターコロナとAI時代に、「あなたの留学」を考える

※この記事は2022年に執筆したものですが、2025年に加筆・構成を見直しました。
迷った
ときに読みたい、留学コラム
留学中やその前後に、多くの人が直面する迷いや不安について、現場経験から感じたことをまとめています。MYNDS代表・海野芽瑠萌による、実体験に基づく留学コラムです。
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アフターコロナで変わった留学の価値観
2025年現在、既に聞き飽きた表現である「アフターコロナ」「ニューノーマル」ですが、改めて「アフターコロナの留学」、そして最後に、2025年の「AI時代の留学」についてお話させて頂こうと思います。
20年~22年度はコロナウィルスの世界的な蔓延によって、渡航制限やカナダの場合は外出制限がかかるなどし、留学へ行こうにも行けないという方、延期やキャンセルをせざるを得ない方が増えました。
どこの国籍の留学生も軒並み減っており、「もう留学ビジネスは終わりだ!」と頭を抱えていた学校やエージェントも多くありました。
ただ、私は、「日本人の留学/英語教育」に関しては、コロナウィルスの蔓延に関わらず、2020年はいずれにせよ大きなターニングポイントであったと思うのです。

オリンピックがけん引した英語教育改革
少し経緯を付け足すと、2013年9月7日、今から約7年前にブエノスアイレスで、2020年の夏季オリンピックの開催地に東京が選ばれました。
文部科学省は、世界中からの観光客や競技選手たちの訪日を見込み、小中高等学校を通じた英語教育改革を計画的に進めるための「英語教育改革実施計画」を発表し、その計画に基づき、2020年までを一旦の区切りとした英語教育の改革を図りました。また、13年10月には、官民協働の留学促進プロジェクトである「トビタテ!留学JAPAN」を開始、奨学金付与により2020年までに大学生の海外留学を当時の6万人から12万人へ、高校生の留学を当時の3万人から6万人へ増やすことを目指しました。
これより前の時点で、「グローバル化」や「早期の英語教育の必要性」は既に議論されていましたが、「オリンピック」という一つの大きな目標と期限を得て、この7年間、日本は、国内の小中学生などにはより早期から英語を学ぶ機会を整え、高校・大学生には海外を見て見識を深める機会を増やす、ということを国を挙げて積極的に行って来たわけです。
広がる英語教育の波紋と社会的変化
石を投げると波紋がだんだんと広がっていくように、それに伴い、英語教育を行う教員の方に留学や英会話強化の需要が出たり、グローバル化を見据えた親御さんの教育方針に影響が出たり、英語教育や留学、旅行に関わるビジネスが成長したり・・・、というように、「英語」をキーワードとして様々な世代、分野に影響を与えて来ました。
今、学生の方は現場の混乱も実感されている所かと思いますが、2020年までに様々な英語教育に関する変更が行われて来ました。例えば、一旦、今までの「大学入試センター試験」は終了し、大学入試共通テストに取って変わる予定です。英語に関しては、元々はこのタイミングで民間試験の活用が予定されていました(19年一旦延期を決定、25年までを目標として導入予定)諸々の遅れや、変更はあるものの、オリンピック開催に向けて進めて来た内容が概ね完成を見たのが20年という年です。

2020年の混乱とその意味
さて、その2020年にまさにこのコロナウィルスのパニックが起こりました。その後の混乱は皆さんもご存じの通りですが、これらの経緯を考えると、20年度の転換は降って沸いた変化ではなく、日本人の留学・英語教育にとっては一部、必然でもあると思うのです。
「留学」というトピックでいうならば、2020年から22年まで続いた渡航制限による留学の延期や中止などを残念なこと、運が悪い、と見ることもできると思いますが、私は、「立ち止まって考えるとても良いタイミングであった」と考えます。
これまで「留学」を検討して来た方の中には、上記のような、いわば社会的な大きな流れに影響され、グローバル化はよいことである、英語は話せるようになるべきである、留学はするものである、というような考えを持っていたことに気づくかもしれません。
ただ、実際には、決してそうではありません。
恐らく、留学経験者の中には
留学など意味がない
留学は時間とお金の無駄だ
と言う人もいると思います。
ただ一方で、
留学して本当によかった
留学して人生が変わった
と言う方もいるはずです。
なぜそういうことが起きるかと言うと、留学に求めるものやイメージするものが皆さん違うからです。
留学のリターンは人それぞれ
例えば仮に、1年の留学で、学費+生活費+交通費+お小遣いなどで300万円かかるとしましょう。
あなたは今から、300万円を留学というものに投資するのです。
1)リターンを金銭的に考える
帰国後、留学によって得たもので以前の仕事より月給が5万円も上がった。数年続けてさらにキャリアアップし給与がさらに上がったので、5年で300万円を超すリターンを得たことになる。
2)リターンを経験で考える
留学時に世界中からの友人を作り、帰国後も繋がるなど世界が広がった。出会った人との思い出や経験は何にも代えがたいものだ。
3)人生を変えるターニングポイントとして考える
留学時に、人生で最高の友人/配偶者/会社に出会った。英語が話せることで自分の引っ込み思案な性格が変わった。日本を出て海外に永住する決心がついた、などで、その後の人生が一変した。

極端な例としてこの3つを挙げましたが、あなたのお金の使い方としてはどれに近いでしょうか。人生の何か大きなきっかけとしてえいやっとお金を出す方もいれば、確実に戻る投資でなければ出したくないという人もいるでしょう。旅行好きな方のように、ご自身が目にするもの、触れるもの、出会う人を最重要視する方もいるでしょう。そして、300万円の価値も人によって違うでしょう。
つまりそれが大きくずれてしまうと、あなたにとっての留学は無価値なものになってしまう可能性があるんですね。
「英語ブーム」の終焉と再定義の時
ここまで話して来た通り、2020年までの日本は、一種「グローバル化ブーム」「英語ブーム」であったと言えます。そこに、たくさんの人が多くのお金と時間を投じて来ましたし、そこには就職の需要(例1のような)などの分かりやすい社会の後押しやリターンがありました。それが一旦、終わったのだと言えます。
加えて、その後に起きた23~25年のAIブーム。リリース直後には使っていなかったとしても、24~25年でChat GptをはじめとするAIツールを使い始めたという方が圧倒的に多いと思います。「あれ、自分で英語を話せる/書ける/読める/聞き取れる必要ってある?」とまさに誰もが疑問を感じている世界の中で、「あなたが」一体何を求めて、どんなリターンを期待して、どんな自分を夢見て、それに対して、いくら投資して、どれだけの時間を使うか、という留学プランを考えるのかはとても重要なことだと思います。
「英語」だけを目的として、それを身につける方法としての留学は、コスパもタイパも非常に悪いものですから。
「他人の留学」ではなく「あなたの留学」へ
アフターコロナの2021年度のお問合せは、「どうしても諦めきれない」というアツい気持ちをお持ちの方や、非常に細かい所までしっかり調べた上で検討したり、基礎英語力を上げてから留学申込をされた方が多いため、決めてから渡航までが非常にスムーズだった、ということも多かったです。
また、特に25年に入ってからのお問い合わせでは、恐らくAIツールを使って一通りの下調べをした上で、「人間」にダブルチェックをしてほしいのだなと感じるお問い合わせも増えてきました。
私は、この留学エージェントのビジネスに長く関わって来ましたが、まさにこの5年ほどで、留学のあり方も、留学プランニングの方法も大きく変化していると感じます。
「他のみんながしている留学というもの」ではなく、「あなたの求める留学」を一緒にカタチにしていけたらと思います。

