カナダBC州の公的医療保険、MSPのビザ別活用方法
カナダ留学にあたり、滞在期間に関わらず必要不可欠なものとして医療保険があります。カナダの医療費用が著しく高いこと、従来健康な方でも予期せぬ怪我や病気、特に環境の変化により身体に不調をきたすことは珍しくないですので、短期滞在の方でも渡航前に保険を手配しておく必要があります。
ブリティッシュコロンビア州では公的医療保険、MSPがカナダ市民、永住権保持者を中心に提供され、一部留学生でも対象となる場合、また加入が義務づけられている場合もあります。ビザ別にメリット、デメリットをご検討の上、最善な方法をご選択いただきたく、今回はMSPのビザ別活用方法のご紹介です。
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目次
民間の保険と比較した際のMSP加入のメリット、デメリット
留学生がカナダに渡航される際、医療保険の選択肢として、日本の民間保険、カナダの民間保険、クレジットカード付帯のもの、そしてMSPがあります。クレジットカード付帯のものは海外旅行者向けに設定されていることが多く、期間や上限、補償内容に乏しいことが多いですので、留学生の多くはその他の3つの選択肢が推奨されています。MSPは全ての留学生が対象となるのではなく、6か月以上の学生ビザ所有者、一部のワーホリビザの方、就労ビザ保持者が対象となります。6か月以上の学生ビザで渡航をされる方については、MSP加入が義務づけられていますので注意が必要です。では、MSPを検討されるにあたり、メリット、デメリットはどのようなものでしょうか。
MSPに加入される最大のメリットはキャッシュレスで通院、治療が受けられること、お財布に入るカードが州政府から発行されるため、一部IDとして使用できる場合もあります。留学生は月額75ドルと料金が設定されていて、医師による診察や治療、検査費用など幅広くカバーされます。
デメリットとして、対象者が細かく限定されていて、ワーホリの方ですと6か月以上ビザが有効であること、6か月以上BC州に滞在予定であること、週18時間以上就労されていることを証明するレターを雇用主から発行してもらえることなど、条件が少し厳しくなります。また、カナダの民間保険に比べ発行元が州政府となりますため、融通がききにくかったり、問い合わせ方法が電話中心となること、日本語でのサポートが乏しく、不具合が生じた場合の対応を全てご自身でしていただく必要がある、といったデメリットがあります。また、補償内容も歯科や処方箋は適用外、州外で生じた怪我や病気への補償が大変限られているなど制限がありますので、ご検討の際は注意が必要です。
それではビザ別の活用方法について、検討していきましょう。
学生ビザ入国、滞在又は延長予定の方
学生ビザで6か月以上通学、滞在する留学生はMSPへの加入が義務づけられています。ワーホリの方と比べ加入方法が簡易であり、MSP活用に最も適している層ともいえます。MSPでは最初の3か月間は待期期間とみなされていますので、ご渡航前に3か月分のみカナダ、又は日本の民間保険に加入され、ご渡航後すぐにMSPの申請手続きを行う必要があります。
注意点として、この3か月ルールの数え方が少し特殊な点が挙げられます。例えば9月10日にご渡航されるとしましょう。9月10日から90日間と数えるのではなく、9月を最初の月と数え、3か月後の12月1日からMSP開始となります。そのため、ご渡航日から11月末日まで、民間の保険が必要とお考えいただくといいですね。
学生ビザの延長を現地で予定されている方も多いことと思います。MSPではビザの有効期限に相応した期間のみ発行されますため、ビザ延長申請の度にMSPの延長申請も必要となります。2022年5月1日より、ビザ延長のためカナダに合法で滞在を続けている方もMSP延長ができることと規定改正がありました。最初のビザが切れる前にオンラインにてMSPの延長申請、また新しいビザが届き次第再度、MSPの延長申請といった流れとなります。従来MSPに関する手続きは郵送が中心で手続きが行われていましたが、オンラインシステムが導入されましたので、手続きが簡素化され嬉しい限りです。
ワーホリの方
冒頭でもご紹介した通り、ワーホリでのMSP加入にあたり、ビザの有効期限が6か月以上の方、BC州に6か月以上滞在予定の方、また週18時間以上就労されていることを証明できるレターを雇用主から取得できる方、の3点の条件を満たすことが条件と課されています。
また、ワーホリでは現在でも入国要件として、希望滞在期間を満たす保険加入の証明が義務づけられています。保険の内容として、通院治療、入院及びrepatriationが適用されるもの、と規定され、MSPでは最後のrepatriationが対象外のため、ワーホリの方にはMSPはあまり適していない印象があります。ではrepatriationとは一体何を指すのでしょうか。
repatriationとは病気や怪我、障害などが理由で通常の航空便により帰国ができない場合の補償を指します。例えば皆さんが予期せぬ怪我により入院、手術を経験され、一定レベルまで回復された場合、カナダでは入院期間が大変短いですので、自宅療養が勧められます。カナダではご家族がいらっしゃらないこと、通学や就労など留学の目的がもはや達成できないため帰国が必要となっても、長時間航空便の狭い座席で身動きがとれない状態での帰国は難しいでしょう。一部民間保険ではそういった場合の自国への送還費用が含まれていますが、あいにくMSPでは対象外となってしまいます。カナダでの入国にあたり、repatriationが補償内容として必須項目となっていますので、注意が必要です。
カナダ現地でワーホリビザの延長をされる方も、保険加入の証明義務は同様ですので、MSPではなく民間保険のご加入をお勧めいたします。
観光ビザの方
残念ながら、観光ビザでカナダに滞在される方はMSPの対象外とされています。ただ、現地で6か月以上の学生ビザに切り替えをされる方はMSPへの加入義務がありますので、ビザを受取次第直ちに手続きを行いましょう。手続きには21日ほどかかるとされ、学生ビザの開始日から保険が開始とされ、費用が請求されます。MSPのカードを受け取れるまで時間がかかる一方費用請求は遡って行われる点について、なんだか損しているような気がしてしまいます。
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今回はビザ別にMSPの活用方法をお伝えいたしました。学生ビザの方は義務化されていますのでMSPのシステムをしっかりご理解いただいた上でご渡航前からプランニングされ、積極的にご活用いただければと思います。ワーホリの方も一部対象にはなりますが、ビザとの連動、申請条件における制限があり、カナダの民間保険のほうがメリットが多いと感じられるかもしれません。民間保険も会社により補償内容や請求方法などが異なりますので、違いをしっかり理解した上で皆さんのニーズにあった保険をご選択いただければと思います。
カナダ留学中において、一度も体調を崩したり怪我に遭遇することなく、ご帰国ができる方にとって、保険は無駄な出費に思えるかもしれません。ただ、滞在中にスキーや水泳など、少し危険の伴うスポーツに参加される際に、”もしも何かあった場合、高額なカナダの医療費を払えるのだろうか”といったことが気がかりで心から楽しめない、又は皆さんはご不安に感じなくても日本のご家族が心配な日々を過ごされているようでは、留学の目的が本末転倒となるのではないでしょうか。
保険は必要出費と割り切って、一日でも途切れることのないようしっかり手配をされた上で、後悔のないアクティブな留学生活をお過ごしいただければと思います。
ライター Aki
ワーホリ、学生ビザ等でのカナダ留学歴約3年半、カナダ移民歴6年のビクトリア在住女性。
飲食店や介護施設、サービス業など幅広い業種を経験した後、ブリティッシュ・コロンビア州の保険資格を取得し、現在保険会社にて顧客対応、管理業務に従事している。
趣味はパブリックスピーキング、ズンバ、ヨガなど。
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