カナダの山火事と空気汚染 ― 留学生・渡航者が知っておきたい安全対策

カナダの壮大な自然は大きな魅力ですが、その一方で毎年のように 山火事(wildfire) が発生し、広範囲に煙や空気汚染をもたらすことがあります。都市部にまで煙が届き、空がオレンジ色に染まる映像をニュースで見たことがある方もいるかもしれません。
こうした山火事は、留学生や渡航者にとっても「どの地域に滞在するか」「日々の生活でどんな対策をとるか」を考える上で無視できない存在です。
- カナダの大学・カレッジ進学に興味がある
- ワーホリで働きながら留学したい
- カナダで就職・移民が気になる
- Co-op、看護師留学など多数取り扱い
あなたに合った留学のカタチをご紹介します。留学のご相談は無料です。

Table of Contents
山火事の季節と発生要因
カナダでの山火事シーズンはおおむね 4〜10月 が中心ですが、乾燥条件や気温が揃えば前後することもあります。現代では、気候変動により乾燥傾向と高温日数が増え、山火事の発生と長期化リスクも高まっています(カナダ政府による煙・空気質ガイドでは、今後もこの傾向が続くと警鐘を鳴らしています)。
火災の発生要因として、以下が挙げられます。
- ・雷による自然発火
- ・落雷後の乾燥した気候下で火が拡大
- ・人為的な原因:キャンプファイヤーの消し忘れ、バーベキュー・火花、列車線路からの火花など
現代では、気候変動・乾燥化・森林管理の変化などが火災拡大を助長しているという見方が強くなっています。

近年の火災事例と動向
カナダの森林火災は年ごとに発生地域や規模が異なるものの、ブリティッシュコロンビア州やアルバータ州、ケベック州などで特に多く報告されます。こうした火災と煙の拡散は、風向き・気象条件によって遠距離にまで影響を及ぼし、都市部の空気質にも変化を与えます。
たとえば、2024年には Alberta 州ジャスパー国立公園 で大規模な火災が発生し、25,000名以上の避難を強いられ、358棟の建物被害が報じられています。2025年は、マニトバ州などで 17,000名の住民避難 の事例が報じられており、山火事および移住避難が現実的なリスクとして現れています。
国や州は緊急時に「Preparedness Level」を設定し、必要に応じて国外からも消防隊を受け入れています。こうした体制が示すように、山火事は局地的な問題ではなく、国家レベルでの対応が必要な大規模災害なのです。

山火事・空気汚染による健康リスクと症状
山火事による煙には微細粒子(PM₂.₅)や有害ガスが含まれており、呼吸器・循環器系に影響を及ぼす可能性があります。
一般的な症状としては以下が挙げられます。
- ・咳、息切れ、息苦しさ
- ・喉の痛み、目の刺激、鼻水
- ・動悸、胸部不快感
- ・持病(喘息・心疾患など)を悪化させる可能性
特に小さなお子さんや高齢者、喘息などの持病を持つ人は影響を受けやすいため注意が必要です。煙害が強いと、健康な人でも咳・喉の痛み・頭痛・倦怠感などを感じることがあります。
Wildfire smoke and your health
https://www.canada.ca/en/health-canada/services/publications/healthy-living/wildfire-smoke-health.html
煙害への具体的な備えと対策
① 空気質・気象情報の確認
カナダでは Air Quality Health Index(AQHI) によって空気質の状態が示されます。政府の気象サイトやスマホアプリからリアルタイムで確認でき、警報が出る場合もあります。
また、住んでいる州や自治体によっては緊急通知アプリやウェブサイトで山火事・避難情報を配信しています。例:オンタリオ州の「緊急警報システム(Alert Ready)」やBC州の緊急情報サイトなど。こうしたサービスを登録・活用することで、渡航者や留学生も早めの行動判断が可能になります。
② 室内の空気を守る
- ・煙害時は窓やドアを閉め、できるだけ室内で過ごす
- ・エアコンを使用する場合は外気を取り込まない設定にする
- ・空気清浄機を活用する(HEPAフィルター搭載が望ましい)
- ・公共施設(図書館、ショッピングモール、コミュニティセンターなど)は冷房・空気ろ過が整っており、一時的な避難先として有効

③ 屋外活動とマスク
やむを得ず外出する場合は、サージカルマスクやN95マスクを着用しましょう。布マスクは煙に含まれる微小粒子を十分に防げないため不十分です。体調不良を感じたら、無理をせず屋外活動を控えることが大切です。
④ 猛暑と煙害が重なった場合
- ・こまめに水分補給をする(喉が渇いていなくても)
- ・激しい運動や屋外での長時間活動を避ける
- ・涼しい屋内で休む、冷たいシャワーを浴びるなどで体温を下げる
⑤ メンタルヘルスのケア
煙害や避難生活はストレスや不安を引き起こします。十分な睡眠、軽い運動、友人や家族との連絡が心の支えになります。症状が強い場合は、医療機関や州が提供するホットライン(例:811)を利用することも推奨されています。

Evacuation(避難)時の判断と行動
山火事が自分の地域に迫っているときは、以下のような避難準備と対応が求められます。(Red Cross Canada より)【引用:Red Cross Canada “Wildfires”】:
- ・常に地域の緊急情報や地元当局の指示をモニタリング
- ・避難命令が出たらすぐ従う
- ・避難パック(非常用持ち出し袋)を事前に準備
- ・車両は常にガソリンを満タンに、代替ルートを確保
- ・避難後は関係当局が「帰宅可能」と判断するまで自宅には戻らない
例えば、マニトバ州公式サイトでは、「指定避難ルートに従い、混雑や閉鎖の可能性を考慮して行動すべき」とガイドラインを示しています。
留学生・渡航者が意識すべきこと
日本の場合、全国的に地震発生に備えていることが多く、自然災害への備えについては馴染みがあるかもしれません。カナダでもその心得を忘れず、万が一のためにしっかり準備をしておきましょう。
- 在留届・たびレジの登録
外務省の在留届や「たびレジ」に登録することで、災害時や緊急時に大使館からの重要情報を受け取れます。 - 健康保険と医療体制の確認
留学先の州によっては公的保険が利用できない場合があります。大学が提供する学生保険(例:UHIP、MSPなど)への加入条件を事前に確認しましょう。症状が出た際に受診できるクリニックやキャンパスのヘルスセンターも把握しておくと安心です。 - 緊急時の行動ルールを知る
山火事で避難勧告(Evacuation Alert/Order)が出た場合は、州や自治体の指示に必ず従いましょう。避難経路や集合場所は滞在先のコミュニティ情報や学校から事前に確認できます。
まとめ:自然を楽しみながら備える知識
カナダの自然を満喫することは、留学や滞在の醍醐味の一つです。しかし、山火事やそれに伴う煙害は「毎年起こる可能性のあるリスク」であり、安全な滞在には事前準備と冷静な判断が不可欠です。
山火事発生時には、情報を見逃さず、健康被害を回避する行動をとりましょう。また、避難の際には自治体・国家の指示を守ることが最も重要です。自然を恐れるのではなく、備えながら安心して楽しむ。そうした姿勢で、カナダの大自然を存分に味わっていただきたいと思います。

