キャリア形成準備、カナダの会社で働くということ

カナダ留学の目的として、カナダの会社での就労経験を身に着けたいというお声をよく聞きます。就労を通して英語力を向上させること、カナダ人をはじめ、文化や人種の異なるチームで就労することで見える多文化交流、帰国後の就活に生かすなど、目的は様々かと思います。カナダの会社での就労は日本と比べ、どのような違いがあるのでしょうか。
私はBC州を中心とした、カナダを代表する大規模の保険会社で一年半就労し、現在管理職の一員として日々接客業務、管理業務に励んでいます。カナダではレストラン、お店などのサービス業に従事した経験はあったものの、オフィスワーク、かつ資格の求められる業種への就職は初めてのことで、入社以来、カナダの会社で働くにあたり必要な心構え、能力や資質について考えさせられる機会が多くありました。今回は自らの経験をもとにご紹介できればと思います。また、カナダの会社と申しましても、業界や業種によって大きく異なりますこと、予めご理解いただけますと幸いです。
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目次
自分らしさを発揮することの重要さ
日本人はシャイであることが知られているように、日本の会社で働く際は面接過程をはじめ、出社初日、また入社しばらくの間はあまり自分らしさを出さないことが一般的かと思います。環境に慣れること、指導者や上司の言われる通りに研修やオリエンテーションをこなすことで精一杯と感じることも多いでしょう。カナダの会社でも特に試用期間中は上司の期待に沿えるよう、新入社員は一生懸命励みますが、一方で自分から周囲に話しかけたり、チームメンバーを理解しようとする姿勢、周囲に溶け込もうとする姿勢が重視されます。
自身をはじめ、日本人の多くは聞き上手、愛想が良い一方、自分らしさを出すことを苦手とする方が多い印象にあります。では自分らしさとは、具体的にどういったことを差し、どのように表現するのでしょうか。差しさわりのない範囲で身の上話を打ち明けること、ご自身の好きなことや苦手なこと、得意なことや過去についてなど、心を開くことが第一に挙げられます。得意なことは率先して行う、好きなお菓子を持参して同僚にあげる、といった方法もありますね。カナダ人はおしゃべりな方が多い上、会社は一日の大半の時間を過ごす場所ですので、同僚同士仲のいい職場も珍しくないことと思います。
私の職場では同僚同士、ワークファミリー、職場の家族とお互いに位置付け、公言されることもしばしばあります。最初にこの言葉を聞いた際はとても驚きましたが、仕事という苦楽の伴う活動を共にする仲間ですので、今では私自身も同僚たちをワークファミリーと呼んでいます。
日本と大変異なる点として、歓迎会や送迎会、といった飲み会など、職場以外での懇親の場が少ないことが特徴として挙げられます。カナダでは共働き家庭が主流で、仕事の掛け持ちや学業との両立など忙しい方が多いことが原因として考えられ、公私の区別をはっきりつけることを好む方もいらっしゃいます。その代わり、仕事中に同僚の分のコーヒーをお互いに購入したり、私の勤務先ではピザやお菓子など、会社から支給され皆で一緒に食べることもあります。勤務時間外での交流が限られていますので、勤務時間内に交流活動が行われる印象です。
してほしいことははっきり口に出して伝える
カナダでは日本の会社と比べ、研修や現場指導が少なく、限られた情報やマニュアルをもとに、自分で調べ、仕事を覚えていく能力が求められます。サービス業や接客業では指導者が近くで見守ってくれることが多いですが、オフィス業務では研修がほとんどない、又は大変限られているといったことが珍しくありません。新入社員でも個人のメールアドレスが与えられ、パソコンに向かって作業をしていることで外観上、適切に業務をこなせているのか、業務量や困っていることはないか、など指導者側の視点からは分かりにくいことも多いです。
私の職場での出社初日、最も印象に残っていることは、お昼休憩の時間についてです。当日は朝の9時から5時までの勤務で、朝一番に予定されている研修、オリエンテーション(オンラインで自身のペースで進めていく形式でした)を言い渡されて以来、上司と顔を合わせる機会がありませんでした。12時頃にはお昼休憩があると期待していたのですが、誰にも業務の進捗状況や、何時に休憩に行くべきかなど、声をかけてもらえず、皆忙しそうにしていたこともあり、少し我慢をして様子を伺っていたことを覚えています。振り返ってみればカナダの会社では、新人側から声をかけて質問をしてきたり、困っていること、また休憩の時間など声をあげない限り、誰も一社会人である新人に対して過度に気遣いをしないことは決して珍しくないことと思います。ホームステイでも同様ですが、困っていることを我慢して無理して自分で解決しようとしたり、今更聞きにくい、など遠慮をしないこと、してほしいことははっきり口に出して伝えることが大切ですね。
日々の業務でもどんな仕事内容に取り組んでいるのか、苦労していることやうまくいったことなどを同僚、上司と共有することがとても大切です。雑談での共有を通して、実は同僚も同じことで苦戦していたり、経験から学ぶこと、時には愚痴を言い合って気持ちがすっきりすることもあります。カナダでは褒める文化が主流ですので、自分では顧客対応がうまくいかなかった、と落ち込んでしまっても、隣で見ていた同僚から”よく頑張ったね、私だったらあんなにうまくできなかったと思うよ”などと言われ、驚くこともあります。つらい気持ちを我慢して、自分の中に閉じ込めてしまいますと、同僚側からしたら人間性が見えにくく、心と心の繋がりを持つことが難しいと感じられるかもしれません。愚痴ばかり言ってしまうことは問題ですが、仕事上で出来ることが増えて嬉しい気持ちや、業務上での改善点など、正直に相手の気持ちを考えた上で表現できれば理想です。
オン、オフのメリハリをしっかりつける
日本では業種によっては残業時間が長いことも珍しくありませんが、カナダの多くの会社では定時出社、定時退社が徹底されています。時給制のポジションではもちろんのこと、私の勤務先は月給制ですがそれでも定時退社が重視されています。もちろん仕事の流れにより残業が必要となる場合もありますが、カナダでは時間の管理、特に効果的な時間の使い方が重視されますので、残業とならない働き方、スケジュール管理を第一に心がけましょう。頻繁な残業は時間の管理不足として、マイナス要素としてとられることもありますので注意が必要です。
また、初めて現在の勤務先に入社した際、休暇の取り方について驚いた記憶があります。カナダでは会社、ポジションによって休暇の日数が定められていて、特に大企業では年始頃に一年分の休暇予定の提出が求められることが一般的とされています。その背景として、社員数が多いため希望が重ならないよう調整が困難、煩雑化することが考えられます。年始の時点で年末のクリスマス休暇まで考えなければならないことにとても驚いたことを覚えています。新入社員の頃は遠慮してしまい、長期休暇など申し出にくいと感じる方も多いかと思いますが、カナダの会社では長期休暇は従業員の権利と認識されています。勤務年数や経験に関わらない、最低限の権利ですので、我慢せず申し出るといいかと思います。ただ、規模の小さい職場、チームですと他のスタッフと重なった場合など希望通りの日程が通らない場合も多いですので、調整が必要な場合は柔軟に変更に応じる、といった姿勢は大切です。
初めてカナダの会社で働く際は日本との違いに戸惑うことや、誤解や行き違いを経験される方も多いことと思います。違いを乗り越えること、失敗から学ぶことが英語力だけでなく、社会人、国際人として成長するきっかけとなりますので、恐れずに挑戦していただければと思います。就労は資金を得る手段というだけでなく、海外旅行や短期滞在では経験しずらい、カナダでの貴重な経験だけに、皆さんにとって有意義なお仕事内容、環境で働けるといいですね。今回ご紹介した点は決して付け焼刃で実践できることではありませんが、心構えとして実践に生かしていただければ嬉しいです。
ライター Aki
ワーホリ、学生ビザ等でのカナダ留学歴約3年半、カナダ移民歴6年のビクトリア在住女性。
飲食店や介護施設、サービス業など幅広い業種を経験した後、ブリティッシュ・コロンビア州の保険資格を取得し、現在保険会社にて顧客対応、管理業務に従事している。
趣味はパブリックスピーキング、ズンバ、ヨガなど。
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