留学道⑯‐留学と就職-キャリアを知る
3月になりました。
4月に、大学を休学して、またはお仕事を一度ストップしての留学を控えている方、もしくは、今から新たな年度を迎えるにあたり、今後の留学について検討している方も多くいらっしゃると思います。
今年度から、「留学と就職」というテーマで発信していますが、留学を経た後、やはり皆さんが一番気になるのはその先にある就職ですよね。キャリアについて知るということを今日のテーマにさせて頂こうと思います。
今でこそ、転職、第2新卒なんて言葉も定着していますし、今就職を考える皆さんにとって、昔のように、「就職=一生骨をうずめる会社」なんて考えはとっくにナンセンスだと思います。一方で、「とりあえずやってみて、失敗すればやり直せばいい」と考えるのも少し危険ではあります。
よく、「キャリアアップ」というような単語が使われるため、若いうちにどこかの会社や業界で下積みをし、資格や経験、転職すると「キャリアアップ」、つまり、どこか別次元や別の分野にワープことができて、そこで活躍できるというようなイメージを抱くのですが、実際には、最初の就職から、次、その次のキャリアは1つの線で繋がっています。完全にキャリアを変更するよりは、同じ範囲または、新しく得たスキルとのかけ算で転職している方が圧倒的に多いです。
ですから、今学生の方、または第2新卒など日本(またはカナダで)転職を考えて留学をされる方にとっても、何かに飛びついてしまう前に、まずはキャリアについて、事前に、広く知ること、はとても大切なことだと思います。
例えば、就職を考えはじめた大学生さんを例にしてみると、
証券会社 - なんかお金のことで難しそうだから私は無理
営業 - 私コミュニケーション能力ないから苦手かも
広告代理店 - 私、勉強したことないから無理
・・・
左側はどんな職業でも業種でもいいのですが、この右側、「私は〇〇だから」と、できないの理由にして、どんどん選択肢の幅を狭めている方は意外と多いのではないでしょうか。他にも「資格を取らないといけないから」「潰しがきかないから」「平均給料が安いって聞くから」「もう飽和している業界だから」・・・など、いくらでも「やらない」理由が見つかってしまい、一体何を選んでいいか分からなくなってしまいます。
また、特に今は「AIが入ったらなくなる仕事だから」なども、その業務や業種に手を出すのを恐れてしまう理由になっています。
そういう思考の迷路に陥っている方は一旦その質問は置いておいて、広く、話を聞く、情報を取る、ということに目を向けてみるといいと思います。「興味ある分野/業種の方だけに話を聞きます。」と言わずに、イチ社会人の方の意見として、これまた自分が全く興味のない、考えたこともないような仕事をしている方の話を聞くのも大変有効です。
これだけ多くの仕事があって、多くの大人が毎日仕事をしているわけですが、もちろんその中ではいいこともあれば悪いこともあります。そして、毎瞬間、あぁこの仕事をやってよかった、好きだ、楽しい、と思えるのではなく、地味な作業も失敗もたくさんあるわけです。そういうあるがままの姿を一度、見せてもらって(聞かせてもらって)、「あぁ、働くということはこういうことなんだな」と一度、受け止めて見てほしいのです。
小学生の時に漢字ドリルを一生懸命やった、中学生では文法を勉強した、高校生では小論文を書いてみた、大学生では論文を作った・・・、あなたが学校で、できることを少しずつ増やしていったのと同様に、仕事で今度は同じようにできることを増やして、長いビジネス人生をかけて仕事を学んでいくわけです。そう、何も特別な、全く新しいことをするのではなく、プロセスとしては勉強が仕事に変わっただけなんですよね。
ただ、キャリアについては、例えば学生の時に、数学の先生が、「ここをやれば試験に出る!」と教えてくれたような、分かりやすい絶対的なアドバイス、つまり、「この仕事をしたら成功だよ」「今からの時代は〇〇だよ」と言った明確なものはありません。ですから、世の中に無数にいる多くの大人の意見をできるだけ聞く、という面倒なプロセスが必要になります。100人いれば、恐らく100人が違う答えを返すでしょう。
例えば・・・
世の中が変わって、これだけAIが生活に入りこんでくると「〇〇の分野はもう発展がない」と言われるようなこともあります。それでいうと、今、私たちが扱っている留学というもの、皆さんが身につけたいと思っている英語は、まさにその対象ですよね。
- 通訳/翻訳機能を持ったデバイスが増えて、実際にその言語を話す必要はなくなるのではないか
- 「英語を話せること」の希少性がなくなり、スキルとしての価値が落ちる
こう考えると、「だから、留学業界など今は目指さない方が良いのではないか」と心配になってしまいます。
今日の最初の所で、まず「自分が今持っている興味やスキル」で業界を狭めてしまい、それをさらに、「時代の流れやトレンド」で狭めてしまうと、とても狭い選択肢の中から選ばないといけなくなります。そして多くの場合、その狭い選択肢は、他の人にとっても同じなので、結局、みんなと同じ選択肢を選ぶことになってしまいます。
そのため、自分の知識の範囲内で取捨選択するのではなく、やはり、広く、話を聞く、情報を取って、そこから検討しては、と思います。
先日、私も、ある大学生の方に職業インタビューを受けまして、「留学人口の減少やAI技術の発展を受けての留学事業への変化/影響」についての質問を頂戴しました。これをサンプルに、「キャリアを知る」の一例として、「留学エージェントの話」を挙げてみたいと思います。
もちろん、コロナは大きく留学を変えました。昔は、オンライン受講なんて誰も見向きもしませんでしたし、留学エージェントの私たちとしても、やはり現地に来て生きた英語を学びましょう!と言っていました。でも、初級レベルの方がオンラインでまずは安く基礎英語を学んでから渡航する、もしくは、進学などで大きな出費を予定している方が、事前の英語学習を安く、かつ日本で済ませるためにオンラインを利用するなど、メリットもたくさんあります。上手に共存していくことが必要だと思います。
続けて、確かに翻訳/通訳技術の発展は目覚ましいです。「高いお金をかけて現地へ行く留学なんて不要」と言われて久しいですが、業界にいる身としては、この発展は既に見えていたので、驚きも焦りも実はそれほどないです。Googleをかざすだけで十分、という場面もあると思いますから、全ての人が留学に来ないといけない・来た方が良いとは、実は業界に長くいる私も思っていません。今はいろんな情報が溢れているので、1年ほど留学しただけでネィティブレベルにペラペラになる、というのが幻想であることも、既に留学を希望する皆さんも知っていると思います。
これらを踏まえて、留学それ自体のコアバリューは「英語を話すこと/話せるようになること」ではなく、海外での生活体験、異文化への理解、つまり、海外でめちゃくちゃへこんだとか、恥をかいたとか、すごく感動したという実体験を持つことだと思っています。ネットで見て「分かってる・知ってる」と、”私が”実際に体験した結果の「分かってる・知ってる」の価値は全く異なるし、AIが自分より上手に英語を訳すことと、”私が””自分で”英語を話すことで感じる満足感みたいなものはそもそも比較できないとは思います
また、もう1つ付け加えると、私がいる業界は一言で表すと「留学事業」ではありますが、私個人はこの仕事を通して、マネージングや会計業務など、留学業界以外でも使うことのできるスキルを身につける機会がありました。留学は得意なことではありますが、それしかできないわけではないと思うので、もしかしたら留学が駄目なら他の業界を考えるということも出来るのかもしれません。
そういう意味で、留学それ自体、ひいてはそれに関わっている「私の仕事(キャリア)」が消えてなくなることはないと思っています。
色々な業種・職種の方に、同じように質問してみるとおそらく本当に様々な回答が返ってくると思います。
最初の方に、とりあえずやってみて、失敗すればやり直せばいいという考え方は危険、そして、キャリアは一本の線でつながっていると言いました。
あまり頭でっかちになってしまい、世の中に必要とされているようだけれども実は自分は興味がない仕事や、条件だけで選んだお仕事では、この後の線をうまく繋いでいけないことが多いです。
どんな仕事がしたいんだろう
どんな大人になりたいんだろう
そんなことをたくさん考える留学期間にしてみてください。
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