オンタリオ州の学資援助プログラム【OSAP】
カナダでは日本と同じように、義務教育の次のステップとしてはもちろん、社会人のキャリアアップやキャリアチェンジを目的としてカレッジや大学等の高等教育を受ける人たちが多くいます。現に、経済協力開発機構(OECD)が発表している「Adult Education Level(成人の教育レベル)」ランキングで、カナダの高等教育修了率は60%前後を記録しており、世界で最も高い数値です。
カナダでは公立学校の場合、高校まで学費が無料ですが、高等教育へ進むとなると公立校であっても特別な事情がない限り学費をほとんど自己負担しなければなりません。そんな環境の中、多くの人々が高等教育を受ける理由としては、教育水準が高いこともありますが、経済的な援助制度も整っているからだと考えられます。
こちらではオンタリオ州が提供する高等教育進学者への学資援助プログラムであるOSAPについてご紹介します。
- カナダの大学・カレッジ進学に興味がある
- ワーホリで働きながら留学したい
- カナダで就職・移民が気になる
- Co-op、看護師留学など多数取り扱い
あなたに合った留学のカタチをご紹介します。留学のご相談は無料です。
目次
OSAPとは
OSAPはOntario Student Assistance Program(オンタリオ州学生援助プログラム)の略称で、大学やカレッジ等の高等教育の費用をカバーするための学資援助プログラムです。OSAPには資金提供の種類が大きく分けて2種類あります。
・Grants(グラント/助成金): 基本的には返済の必要がありません。
・Student loan(学生ローン): 貸与された金額とその利子を卒業後または学業を離れた後に返済する必要があります。
※OSAPの申請をする際にどちらかを選ぶというわけではなく、グラントとローンの両方に自動的に申請されます。生徒によってはグラントとローンを混ぜて支給される場合など様々です。
OSAPの学資は承認された高等教育機関であれば、国内外を問わず、その学資として利用できます。教育機関が承認されているかどうかは、OSAP School Searchで確認することができます。
考え方は日本学生支援機構(JASSO)の奨学金の給付奨学金(返済不要)と貸与奨学金(返済必要)にも似ています。
他の州の学資援助プログラム
こちらではオンタリオ州のOSAPについてご案内していますが、カナダでは州ごとに学資支援プログラムを提供しています。一例として、日系の永住者が多いブリティッシュ・コロンビア州のプログラムはこちらです。
StudentAid BC
その他、全州のプログラムはカナダ政府ウェブサイトより確認することができます。
Canada Student Grants and Loans
OSAPの申請資格
カナダ国民、永住権保持者、または保護対象者(難民など)であれば、オンタリオ州に住む全ての年齢層の人がOSAPの資格を得ることができます。ただし、以下の場合はOSAPの対象外となる可能性があります。
・学業要件を満たせない場合
・学校関連の費用を支払うための十分な資金がある場合
・カナダ税務庁(CRA)の情報と一致しない収入を申告する場合
・助成金や奨学金の過払いや多額の未払いローンがある場合
・以前の学生ローンが不履行だった場合
・クレジットチェック(信用調査)を通過しない場合
・破産または債務整理を宣言した場合
・学生ローンの生涯限度額を使い切った場合
・留学生の場合
上記のようにOSAPの対象者はカナダ国民や永住者に限られています。
オンタリオ州には州が学費を援助してくれるOSAPというものがある、と聞いて期待していた留学生にとっては残念かもしれませんが、永住権の取得を目指している場合、将来的に永住が叶ってキャリアアップやキャリアチェンジなどを目的に再び高等教育を受ける際、OSAPの存在を知っていると今後役に立つこともあるのではないでしょうか。
現時点では留学生で学資ローンや奨学金を利用して高等教育を受けたい場合は、出身国の学資援助制度を確認する必要がありますが、カナダ内で、留学生が全く奨学金を得られないということはありません。企業・団体や学校が提供している奨学金は種類も様々です。
OSAPの成り立ちと利用者
OSAPの成り立ち
OSAPが設立されたのは1964年。当時、多くの学生が経済的な理由で高等教育を受けることができず、それが教育の機会に対する不平等と懸念をしていました。そのため、オンタリオ州政府は経済的な負担を軽減し、有能な学生が高等教育を受ける機会を確保するためにOSAPを立ち上げました。この考えは日本学生支援機構も同様で、「教育の機会均等」の理念のもと、経済的理由で修学が困難な優れた学生に学資の援助を行っている点で通じるところがあります。
OSAPの利用者
近年のOSAP利用者の中には経済的に困難な状況にある学生を含め、利用できる奨学金やローンがあれば学費や生活費をカバーできるから、学費を負担に感じているから、親に頼りたくないから、というような学費を支払えないわけではないけれど利用するという方たちも多く、利用している人たちの状況や背景は様々です。
また、OSAPは就学と同時に就労していても受け取ることができるため、受給者であっても在学中に仕事をしている人たちはたくさんいます。
受給額はいくらになるか
2023年現在、独身でフルタイムの学生は最大週510ドルまで、既婚、コモンローまたはシングルペアレントでフルタイムの学生は最大週825ドルまで受け取ることができます。最大額に関する詳細はウェブサイトで確認できます。
OSAPの受給額は様々な要因に基づいて計算されており、以下が主な要因です。
・教育費用:授業料、学用品、生活費にはどれくらいの金額が必要か
・受講形態:フルタイムかパートタイムか
・経済状況:世帯規模や個人・世帯収入
因みにRESP(Registered Education Savings Plan: 登録教育貯蓄プラン)から学資金を引き出しても、OSAPの額には影響しません。
自分がどれくらい受け取ることができるかはOSAP Aid Estimatorで確認してみましょう。
申請方法
OSAPの申請はオンラインで行います。
■用意するもの
・学校とプログラムの情報
・本人の社会保障番号(SIN)と税金情報
・親または配偶者のSIN(※該当する場合)および税金情報
※追加書類が必要な場合もあります。
■締切り
・フルタイムまたは学習期間が21週以上のパートタイムの学生の場合、学習期間の終了から60日前まで
・学習期間が20週以下のパートタイムの学生の場合、学習期間の終了から40日前まで
OSAPの使い道
通常、OSAPのローンは9月と1月に支給されます。OSAPで受け取った資金は授業料、教材費、その他の学用品など基本的には学校関連の費用に利用することができます。これに加え、フルタイムの学生は家賃、光熱費、食料品、交通費、医療費などの生活関連の費用に充てることができ、子どもがいる学生に関してはフルタイム/パートタイムを問わず、保育費に充てることも可能です。
ここで注意しておきたいのは、OSAPの定義の中には”Expected financial contributions”というものがあることです。これは、OSAPはあくまでも学資の援助であって財源の代わりではないということを示します。そのため、一部、子どものいる学生や先住民などを除いて、OSAPの受給者には一定額の教育費を納めることが期待されています。(2023-2024年時点では3,600ドル)
また、カナダ税務庁(CRA)はOSAPに対してT4Aフォームを発行していますが、税金申告時に収入として報告する必要はありません。OSAPの受給は奨学金や助成金と同じカテゴリーに該当しており、非課税です。T4Aは返済開始後に支払いと利息の額がある場合、支払った額の証明となります。T4AフォームはNSLSC(後述のローン支払い先)から入手可能です。
返済について
OSAPを利用するにあたっては返済についても予め把握しておきたいです。中には例えば、利子を払わなければならないのであれば申請をしたくない、という人もいます。
OSAPを含む州ごとの学資支援プログラムの支給額には州政府が負担する部分と連邦政府が負担する部分とがあります。2023年4月1日以降、連邦政府は学資ローンに対する利息を撤廃する施策を講じているため、連邦政府部分には利息がかかりません。
では、何をどのタイミングで返済する必要があるのかを見ていきます。
・学生ローン:返済義務は学校修了から6か月後に始まります。
・助成金や奨学金の過剰受け取り分:本来受け取るべき金額よりも大きな助成金や奨学金を受け取っていたときです。例えば、受給後に学習期間が変更になった場合などに発生します。管轄機関から指示がある際に一部または全部を返済します。
・助成金がローンへ変換された場合:助成金は本来返済の必要がない学資支援ですが、例えば学業を中断したり、報告されていない収入が発覚した場合など、助成金がローンへと変換されることがあります。この金額はOSAPローン残高に追加され、学業を離れた後に支払うことになります。
返済についても、詳しくはウェブサイトをご確認ください。
予め返済が必要だと心得ているローンの場合は良いものの、助成金や奨学金で返済しなくて良いと思っていたものが後になって返済が必要となると、学業や生活にも大きな影響を及ぼしかねません。実際に、助成金がローンへ変換された例などは少なくないようで、近年ニュースなどでも紹介されていますが、受給者にとっては予想外の負担になっているそうです。申請する際やプログラムを変更する際などは慎重に検討した上で、申告情報に誤りがないように注意しましょう。
OSAPの返済はOSAPではなく、National Student Loans Service Centre(NSLSC)という別の機関へ支払いを行います。卒業または学業を離れた後、NSLSCからRepayment package(返済パッケージ)が送られてくるので、総支払回数、最初の支払い日、利率などの情報を知ることができます。NSLSCのオンラインアカウントを作成すると、残高の確認や返済、返済期間の延長申請などが可能です。まとまった資金がある場合は自由に追加の支払いや大きな支払いを行うこともできます。自分の財政状況によって柔軟に返済プランを変更できることもOSAPの特徴として多くの人に利用されている要因の一つになっています。
まとめ
学資ローンや奨学金は学生=若者向けとイメージしてしまいがちですが、カナダではオンタリオ州のOSAPのように年齢を問わず、またその時点で仕事をしている人であっても利用しています。学資支援があることで高等教育へのアクセスもし易く、それが成人の教育レベルの高さにもつながっているようです。
留学生は残念ながらOSAPの対象ではありませんが、例えば留学から就労経験を経て永住権を取得した後、キャリアアップやキャリアチェンジのために学校へ行きたいと思った時に、資金面で利用できるサポートがあるということは大きなポイントです。特に、生涯学習が普及しているカナダにおいては年齢を重ねても勉強したいという意思があれば大いに活用できます。
高等教育を通して知識や能力をより増強することで、皆さんのキャリアや生活が豊かになるのではないかと思います。OSAPのような学資援助が利用できると、経済的なストレスを軽減して学習に励むことができるのではないでしょうか。
この記事へのコメントはありません。