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抑えておきたい対面での接客のコツ

カナダでの初めてのお仕事として、レストランやカフェなどサービス業は大変人気があり、留学生でも比較的採用されやすいため、多くの方が就かれることと思います。チップや賄いがもらえる職場ですと、時給以上の収入が期待できたり、生活費が抑えられる利点もありますね。また、お客さんと直接顔をあわせて接客をすることで英語力の向上を目指される方も多いかと思います。

カナダでの接客にあたり、基礎的な英語力が求められることは大前提ですが、お客さんがカナダをはじめ、幅広い背景を持った方々である場合、日本とは大変異なる能力や資質が求められることはご存じでしょうか。

今回は筆者の経験をもとに、対面での接客のコツをご紹介いたします。

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ゆっくり大きな声で、文法に気を付けて話す

日本人の会話の特徴として、声が小さい、強弱の弱さ、一語一語をしっかり発音しないことが多く見受けられます。自信のなさからぼそぼそと話してしまうことは相手から聞き取ってもらえない原因のひとつとなり、いくら正しい発音、文法で話していても伝わらない、というもったいない状況になります。マスク装着のもとで接客をされる場合は尚更ですね。発音、イントネーションはよく苦手とされる方が多い分野ですが、話し方次第で格段と聞き取ってもらいやすくなる方法がいくつかあります。まず大前提として、お仕事場でよく使用するフレーズをある程度覚えること、特に慣れるまでは同僚のよく発するフレーズを真似することが大切です。決して同じフレーズを長期間、繰り返す必要はありませんが、新しい仕事内容や接客技術に自信がつくまでは心強いツールとなります。特にカナダ人の同僚が頻用するフレーズですと文法や発音が間違っている可能性が低いことも利点のひとつです。ここからは日頃の努力の積み重ねが問われるものになりますが、映画や海外ドラマの字幕を観ながらイントネーションを意識して真似をする、シャドーイングという音読も効果的です。話し方は英語での円滑なコミュニケーションだけでなく、自信の現れ、また対人関係にも大きく影響を及ぼしますので、長期的にしっかり磨きたいという方はトーストマスターズなど、パブリックスピーキングのクラブに所属される方法もあります。皆さんの話し方の特徴をもとに、いかに理解してもらいやすく、自信をもった話し方ができるよう、訓練の場として、リーダーシップ獲得の場としても評判です。

会話においては文法が二の次になりやすく、文法って本当に大切なのか、と質問を受けることがあります。逆に皆さんが日本語を第二言語として話される外国人の方と会話をされることを想定してみましょう。”が”や”は”といった助詞を適切に使用できない方や文末の言葉が曖昧に発音されることで、未来の話なのか、過去のことか、時制が分かりにくく混乱されるかもしれません。英語でも同様、不適切な文法で話される場合、聞き手はチューニングのずれたラジオを聞いているような気持ちになり、大変理解が難しくなってしまいます。文法を気にしすぎて言葉が出てこないようでは問題ですが、できるだけ的確に、一語一語丁寧にしっかり発音するように心がけることで、聞き返される頻度が減るかもしれません。

急がず的確に、会話を大切にする

カナダの接客では会話を非常に重視し、お客さんに気持ちよく話してもらえることが良いサービスだとされている風潮があります。例えば洋服屋さんにお客さんとして入店した際、またレストランに座った際には店員さんに”How are you today?”と聞かれた経験はないでしょうか。接客の際は会話の糸口として第一声、そのように始めますと、お客さん側としては気にかけてもらえている、もてなそうとしてくれている気持ちになります。他の例として、”Do you have any plans today (this weekend)?”といったフレーズもよく使用するものです。もちろんレストランでの接客上、お店を出られた後の予定を聞く必要性はないのですが、楽しい旅行の予定や友達と出かけるなど、会話の糸口にすることが目的です。相手の返答によって共通点が見つかったり、話題で盛り上がることができれば尚更いいですね。

人気のコーヒーショップでの朝の行列時間や、キッチンで忙しい時間など、カナダでもテキパキと効率よく働くことが求められる場面は多くあります。ただ一般的にカナダ人は仕事上とてもゆっくりと、急がずに働く印象があります。銀行の窓口など行列が出来ている時でも店員さんの動きがゆっくりで、焦らないことに驚きます。一見怠慢にも見えますが、お客さん側が急いでいるからといって、商品やサービスの質に影響があってはいけない、間違いを起こさないよう、会社側によりあえて指導されている場合もあります。例えば銀行の窓口で行列ができ、店員さんが慌てて作業をされたことで、間違いが発生してしまったとしましょう。その場では迅速に対応してもらえたことで、お客さんから感謝されるかもしれませんが、後々間違いの修正や謝罪、第三者への影響など多大な時間を費やすことになります。そもそもお客さんが急いでいた理由はお店とは無関係で、時間に余裕をもって来店された他のお客さんと比べて特別扱いする理由がない、という見方もあります。急いでいるお客さんの態度や行列に動揺せず、いつも通り的確に接客を行うこともテクニックのひとつですね。

色んな背景をもつお客さんに接すること

カナダは移民国家として知られ、様々な背景をもつ人々で構成されています。貧富の差も年々拡大していることで、ホームレスの方、低所得者、シングルマザーや若年層の生活困窮者なども多くみられます。また、精神疾患から身なりや振る舞いが他者と少し異なるように見える方もいらっしゃることと思います。対面での接客をしていると、そういった幅広い方々に触れる機会となり、最初は戸惑われるかもしれません。

私の職場では毎日手を振ってこられる、精神疾患の方がいらっしゃり、言葉を話されないのでお名前や症状を深く知ることはできませんが、彼にとってあちこちのお店やオフィスで手を振ることが社会交流となっているようです。以前スーパーで働いていた際、真冬でも短パンを履いたご年配の男性の方が、小銭をもってよく食料を買いに来られていました。そういった方々では意思の疎通が少し難しいことや、思うようにいかないと声をあげられる場面もあるかもしれません。もちろん従業員である皆さんの安全が第一ですが、そういったお客さんでも偏見なく、一人の人間として接客することが求められます。

職業によっては支払いの滞納をされたり、生活困窮により手持ちの現金が十分でないなど、苛立ちを表出されるお客さんもいらっしゃいます。目の前で怒りを表出され、皆さんが責められている気持ちになり恐怖感を感じられるかもしれません。そういった方々は自らの境遇に対して苛立たれているのであって、店員である皆さんに対して怒っている訳ではないこと、お店の商品の値段等は皆さんが決めているわけではないことを必ず念頭におき、感情の線引きができるようになれば理想的です。身体的な暴力や暴言、脅迫などに発展した場合は速やかに管理者の方に報告し、対応を仰ぎましょう。

対面での接客は直接顔をみながらサービスを提供でき、お客さんの反応に直接触れられることが一番の魅力です。移民の方と接することで多文化に触れたり、お子様連れのお客さんとの関わりでカナダの育児について目のあたりにするなど、楽しみもたくさんある半面、言語の壁や文化の違いに戸惑われることも多いかと思います。日本はおもてなし文化が世界的に広く周知されているように、質の高いサービスが当たり前の社会で私たちは生まれ育っています。愛想がよくテキパキと効率の良いこと、細かいところまで気が利く点など、非日本人では珍しい資質を既に持っていることは、サービス業で働かれる上で大きな武器となります。ただ、お客さんとの会話を楽しむ点、また今回ご紹介した内容など、日本とは違った能力が求められる場面も多いですので、是非カナダでの接客術を身に着けられ、カナダ、又は日本での将来のお仕事に繋げていただければと思います。

ライター Aki
ワーホリ、学生ビザ等でのカナダ留学歴約3年半、カナダ移民歴6年のビクトリア在住女性。
飲食店や介護施設、サービス業など幅広い業種を経験した後、ブリティッシュ・コロンビア州の保険資格を取得し、現在保険会社にて顧客対応、管理業務に従事している。
趣味はパブリックスピーキング、ズンバ、ヨガなど。

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