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読めば分かるのに、話そうとすると出てこない?第二言語習得論から紐解く「英会話の瞬発力」の鍛え方

英語をこれから学ぶ方、現在伸び悩みを感じている方、そして留学前後の学習者に向けた新連載コラムがスタートします!

この連載では、英語学習者が日々感じている疑問や悩みについて、英語教育の専門家であるEBLSの二階堂香瑠さんに、第二言語習得論の視点と豊富な指導経験をもとに、Q&A形式で分かりやすく解説していただきます。

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読者からの質問

読めば分かるのに、話そうとすると言葉が出ません

日頃から英語の学習を重ね、単語を覚えたり、文法の復習もしています。ニュースや書籍など、それほど難しくない英文であれば読めば内容をしっかり理解できますし、相手が話している日常会話の流れも大体追うことができます。

ところが、いざ英会話の実践の場で「あなたはどう思う?」と自分の意見を求められたり、少し複雑な内容を説明しようとしたりすると、途端に頭が追いつかなくなって言葉が詰まってしまいます。

頭の中には伝えたいことがあるのに、実際に口から出るのは、いつも同じような短い表現ばかりです。もう少し詳しく話したいと思っても、適切な単語や言い回しがすぐに浮かばず、途中で諦めてしまうこともあります。

読むと分かる単語や文法を、会話の中で使えるようにするためには、どのような練習が必要なのでしょうか。会話の瞬発力を高めるためには、単語や構文のインプットをさらに増やすべきなのでしょうか。

かおる先生の回答

みなさん、こんにちは!EBLSのかおるです。

これは英語学習者の方から本当によくいただくご相談です。そしてまず最初にお伝えしたいのは、「読めるのに話せない」のは、決して特別なことではなく、第二言語習得の過程ではむしろ自然に起こる現象だということです。

「分かる」と「使える」は、脳の中では別の作業

言語学では、知識には大きく2つの種類があるとされています。

・宣言的知識(Declarative Knowledge):言葉で説明できる知識のこと。英語で言えば「この単語の意味はこれ」「この文法はこういうルール」といったものです。

・手続き的知識(Procedural Knowledge):体や脳が覚えていて、「考えずに自動的に使える運用能力」のこと。今回の最大のポイントがこれです。

たとえば「車の運転」を思い浮かべてみてください。

教習所に通い始めたばかりの頃は、「宣言的知識」を使って運転します。「ええと、ブレーキを踏んでからギアをパーキングに入れて…」と、一つひとつの操作を頭で確認しながら運転技術を学びますよね。

しかし、運転に慣れてくるとどうでしょう?「次はアクセルを踏んで、次はブレーキで…」なんていちいち意識しなくても、目的地を見ながら無意識に車を操れるようになっているはずです。この「体が覚えていて、意識しなくても自動的にできる状態」が、まさに「手続き的知識」です。

つまり、今回のご相談者が感じている「分かるのに出てこない」というギャップは、知識が足りないからではありません。その知識を「会話用の運用回路」にまだ移行できていない、つまり自動化できていないことが原因である可能性が高いのです。

インプットを増やすだけでは、瞬発力は伸びにくい

「もっと単語や構文を覚えれば話せるようになるのでは」と思われる方は非常に多いのですが、実はここに大きな誤解があります。

会話で求められているのは、知識量そのものではなく、「限られた時間内に、持っている知識を正しく組み立てて出力するスピード」です。これは言語学で「流暢性(Fluency)」と呼ばれる能力で、語彙や文法の知識量とは別に、訓練が必要な独立したスキルとされています。

そもそも、私たち日本語話者にとって「普通に英語を話す」ということ自体、めちゃくちゃハードルが高いことなんです!

言語科学の視点で見ても、日本語と英語は「言語的距離」が最も遠い(言語が似ていない)組み合わせの一つです。文法も単語のルーツもまったく類似性がないため、話すときは頭をフル回転させながら文章を組み立てなければなりません。

おまけに発音だって、日本語にはない音がたくさんありますよね。LとRの区別、BとVの使い分け……。頭で必死に文章を考えながら、同時に「口や舌の動き」にも意識を集中させて、正しく産出しようと頑張っているわけです。

かおる先生のひとことアドバイス
言語の構造も違えば、発音だって違う。脳の処理が追いつかなくなって言葉が詰まるのは、ある意味当たり前!とにかく「普通に英語を話す」というのは、日本語話者にとっては普通に難しいんじゃ!と、まずは開き直ってしまいましょう!(笑)

ですから、読解や聞き取りのインプット学習だけを増やしても、この複雑なアウトプットの回路自体は強化されません。スポーツで例えるなら、ルールブック(知識)をどれだけ読み込んでも、実際にフィールドに立って体を動かす反復練習(回路の強化)をしなければ、試合で瞬時に動けないのと同じなのです。

会話の瞬発力を上げるために必要な4つの練習

具体的には、以下のような「知識をアウトプットに変換する練習」を意識的に取り入れることが効果的です。

①アウトプット練習の絶対量を増やす

文字通り「声に出して使う」回数そのものが、運用回路を太くしていきます。完璧な文を目指さず、まずは知っている単語と文法だけで、とにかく話す・言い換える練習を繰り返すことが重要です。

②シャドーイングで「英語の回路」を自動化する

聞こえてくる英語のすぐ後ろを影(シャドー)のように追いかけて発話する「シャドーイング」は、瞬発力を鍛える最強のトレーニングです。脳に「英語の音を聞く(インプット)」と「すぐに真似して発音する(アウトプット)」を同時にやらせることで、言語的距離の遠い英語の語順や発音のシステムを、頭で考える前に体に染み込ませて「自動化」できます。最初は短い簡単なスクリプトから、口が勝手に動くくらい繰り返してみましょう。

③同じ内容を、何度も違う言い方で言ってみる(パラフレーズ練習)

一つの意見を、簡単な言い方・少し詳しい言い方・別の単語を使った言い方など、複数のパターンで言い換える練習です。これにより、「とっさに出てくる表現」のストックが、暗記ではなく運用として増えていきます。

④時間的プレッシャーの中で話す練習を取り入れる

「ゆっくり考えれば言える」状態から、「考える前に口が動く」状態へ移行するには、時間制限のある練習(例えば15秒以内に意見を言う、など)が非常に効果的です。これは流暢性トレーニングの基本的な手法の一つです。

かおる先生のひとことアドバイス
最初から「ペラペラ話そう」としなくて大丈夫。この4つの練習の共通点は、脳の『引き出しを開けるスピード』を速くすることです。まずは1日5分、シャドーイングをしたり独り言を呟いたりすることから、脳に新しい回路を作っていきましょう!

インプットとアウトプットの配分を見直す

もちろん、インプット(読解やリスニング)は語彙や表現の土台を作る上で欠かせません。ただ、今回のご相談のように「分かるのに話せない」という段階に来ている方は、すでに土台となる知識は十分にお持ちであることが多いです。

その場合は、インプットの比重を少し下げて、「今ある知識をどれだけ口から出す練習に変換できているか」というアウトプット視点で学習を見直していただくと、変化を感じやすくなるはずです。

知識を増やすフェーズと、知識を運用に変えるフェーズは、それぞれ違うトレーニングが必要です。これを意識するだけで、学習の進め方は大きく変わってきますよ!


【参考文献】

  • Canale, M., & Swain, M. (1980). Theoretical bases of communicative approaches to second language teaching and testing. Applied Linguistics, 1(1), 1-47.
  • DeKeyser, R. (2007). Practice in a Second Language: Perspectives from Applied Linguistics and Cognitive Psychology. Cambridge University Press.
  • Nation, P. (1989). Improving speaking fluency. System, 17(3), 377-384.

まとめ

かおる先生、ありがとうございました!

車の運転の例、とても分かりやすかったです。免許を取ってとりあえず運転はできるけれど、苦手意識はあるし、長く運転していると疲れる。でも、日々運転を続けることで、よりスムーズに、より自然に運転できるようになっていきますよね。英語の知識を増やすことと、すでに知っている英語をすぐに使えるようにすることは、別の練習が必要だということが良く分かりました。

現在は、シャドーイングや独り言に加え、AIとの音声会話もアウトプット練習に活用できます。同じ質問に繰り返し答えたり、一度話した内容を別の表現で言い換えたりする練習は、一人でAIとなら気兼ねなくできそうです。

まずはAIで繰り返し練習し、留学先や日常生活の中で実際に使ってみる。この両方を組み合わせることが、知っている英語を使える英語へ変える一歩になりそうです!

カナダ留学や進学についてはMYNDSへ。
英語学習や個別レッスンの相談については、EBLSへお問い合わせください。

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✒️ 英語教育コラム 執筆・監修

英語教育の専門家 二階堂香瑠

EBLS

二階堂 香瑠(Kaoru Nikaido)

所属:EBLS – Enrichment Bilingual Language Services 代表
専門:英語教育、第二言語習得、英語学習コンサルティング
資格:TESL Canada公認英語講師、オンタリオ州教員免許

◼︎ 略歴・バックグラウンド

トロント大学教育大学院(OISE)教育修士課程(第二言語教育専攻)修了。トロント教育委員会(TDSB)の高校教員(日本語科)。
日本の大学を卒業後、トロント大学教育大学院(OISE)に留学し、第二言語習得法(SLA)に関する知識や理論を学ぶ。卒業後はトロントのESLスクールで英語講師として5年間勤務。並行して、日本の在外教育施設(補習授業校)にて、高等部の国語科教員として10年間勤務し、教育現場での経験を積む。

2016年にEBLSを設立。自身の英語学習経験と、実際の教育現場で得た経験、そして、第二言語習得法に基づく理論や指導法を融合させながら、生徒様の目標実現に向けたサポートに取り組む。

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