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「そんなつもりじゃなかった…」を防ぐ!カナダの職場で愛され、成果を出すためのコミュニケーション設計(SHAPE & LEAP)

「カナダ人上司の『Let me think about it』をどう解釈する?日本人留学生が陥りがちな『指示待ちの罠』と5つの物差し」

「カナダで働き始めたけれど、上司や同僚の言っていることの真意が掴めない…」

「英語の問題ではなく、仕事の進め方やカルチャーのギャップでモヤモヤする…」

そんな悩みを抱えていませんか?

先日、日系ビジネスコミュニティ「新企会(SHINKI-KAI)」にて、異文化ワークプレイスの専門家であるJohn Edward McGraw氏(Hiyaku Coaching)によるセミナーが開催されました。今回は、そこで共有されたマネジメント層も唸る「カナダの職場特有の価値観」を、現地で働く・働きたい留学生の皆さんの視点に合わせて特別にアレンジしてお届けします!

※補足
セミナーでは、参加者はマネジメント(上司)側の立場で「カナダ人部下とどう向き合うか」という内容で構成されていましたが、こちらの記事では、皆さんが現場でイメージしやすいよう、「カナダ人上司」と「日本人部下」の設定に入れ替えてお届けします。
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よくある大誤解!ケーススタディで見る「すれ違いの瞬間」

ストーリー

主人公(部下・留学生): YUKA(ユカ)
設定: カレッジを卒業し、現地のカナダ系ローカル企業(または多国籍な職場)で働き始めたばかりの日本人留学生。真面目で仕事熱心だが、日本の「空気を読む」「指示を待つ」癖がまだ少し残っている。

上司(マネージャー): KEVIN(ケビン)
設定: 生粋のカナダ人マネージャー。フレンドリーで優しく、マイクロマネジメント(細かく監視すること)を嫌い、部下の自律性を重んじるタイプ。

カナダの職場で働き始めて3ヶ月目のユカ。ある日、上司のケビンから「来期のマーケティングプランについて、何かアイデアがあれば教えて」と言われました。

ユカは一生懸命リサーチし、素晴らしいスライド資料を作ってケビンにプレゼンします。

ケビンは笑顔で “Wow, Yuka! This is very thorough. Thank you. Let me think about it. We’ll talk again!”(ありがとう、すごくよく調べてあるね!ちょっと考えさせて。また話そう) と言ってくれました。

ユカは「褒められた!でも『考えさせて』と言われたから、今は勝手に進めずに、ケビンからの次の指示やGOサインを待とう」と思い、自分のデスクに戻りました。

それから1週間後。
ユカは「あの件、どうなったのかな…」とモヤモヤしながら、ケビンに「先日の件ですが、どうすればいいですか?」と進捗を確認しに行きました。

するとケビンは少し不思議そうな、そして少しがっかりした顔でこう言ったのです。
「え?まだ何も進めてないの?僕はあの時『よく調べてある(=良い提案だ)』と言ったよね?リサーチの続きをするとか、次のステップの準備を進めていると思ってたよ」

ユカはショックを受けました。「『考えさせて』って言われたから待っていたのに、自発性がないって思われちゃったの…?」

何が起きていたのか?(双方の脳内)

部下・ユカ(日本人的感覚): 「『考えさせて』と言われたのだから、上司のGOサインや具体的な指示が出るまでは、勝手に動かずに待つのがマナー(空気を読む)だと思った」。

上司・ケビン(カナダ的感覚): 「『よく調べてある』と褒めたのだから提案には満足している。検討中(NOではない)の間に、いつでも動けるよう自らオーナーシップを持って準備を進めるのがプロフェッショナルだ(指示待ちでは困る)」。

ワンポイントアドバイス
このすれ違いは、ユカの英語力の問題でも、ケビンの不親切さのせいでもありません。カナダの職場にある「5つの価値観」を知らないと、あなたも良かれと思って「指示待ち」になり、評価を下げてしまう可能性があるのです。

カナダの職場を読み解く5つの物差し「SHAPE」

John McGraw

上司ケビンがなぜそのような行動をとるのか、カナダのビジネス環境の行動基準「SHAPE(シェイプ)」のレンズを通して覗いてみましょう。

John McGraw氏もセミナー内で強調していましたがこちらはあくまでカナダ人の一般的な傾向です。そのため、全ては、「It depends.」。上司により、状況により、仕事場により、見え方は少しずつ異なります。

ただ、このような傾向があると理解することで、相手への行動や見え方も変わってきます。

S – Sociability(社交性・自発性):

自分から進んで発言し、行動を起こすことが「やる気と自信」とみなされます。ユカのように「丁寧に進捗の指示を待つ」ことは、カナダでは「主体性がない」とネガティブに捉えられかねません。

H – Harmony(調和とフィードバックの緩衝)

「北米の人は主張が強い!」というステレオタイプを抱いている方もいるかもしれませんが、実はカナダ人はとても調和を大切にします。そのため、ネガティブなフィードバックを伝える時も、優しい言葉(オブラート)で包む傾向があります。相手が優しいトーンだからと安心せず、「言葉通りに受け取らずに、その奥にある真意(改善の要求など)を見極める」必要があります。

とは言え、日本のように、厳しい言葉や批判的な意見が部下の成長を促す、というような感覚はなく、ポジティブな褒め言葉は、基本的には本気(心からの言葉)です。

A – Acceptance(受容・対等な関係)

部下は一人の『協力者(collaborator)』として扱われ、より大きな裁量(自主性)を与えられます。ケビンはユカを「指示を待つ子供」ではなく「対等なビジネスパートナー」として扱っているため、「次どうしますか?」ではなく「次はこう進めます」という提案を期待しています。

P – Privacy(プライバシーの尊重)

仕事とプライベートは完全に切り離します。ケビンが定時を過ぎたら仕事の話を一切しなかったり、週末の過ごし方に干渉してこないのは、あなたの私生活や個人としての時間を100%尊重している裏返しです。一方で、裏を返せば、就業時間内はプロとして自立していることが前提となります。

E – Efficiency(効率性)

結論から簡潔に伝えることが美徳。上司に相談や進捗報告をする際も、長い背景説明は省き、「結論・要件・自分の意見」を1文目から伝えるのが効率的です。

指示待ちから脱却する自己救済の4ステップ「LEAP」

John McGraw

もしあなたが「ケビンの指示、ちょっと曖昧だな」「このまま待っていていいのかな」とモヤモヤしたら、立ち止まって「LEAP(リープ)」のループを回して自分で軌道修正をしましょう。

L – Let go of assumptions(思い込みを手放す)

「『考えさせて』と言われたから、今は何も触らないのが正解だろう」という、日本の常識ベースの思い込みを一度疑ってみる。

E – Engage with curiosity(好奇心を持って、フラットに質問する)

「怒られるかも」と萎縮せず、上司の真意を確かめるための質問をその場、またはデスクに戻る前に投げかけます。

このような場面で使える英語フレーズ

“Thank you! While you’re looking into it, would it be okay if I start looking into [〇〇] to prepare for the next steps?”(ありがとうございます!考えてくださっている間、私は次のステップに向けて、〇〇を進めておいてもよろしいですか?)
※[ 〇〇 ] の部分には、the supplier options(仕入れ先の選択肢)や the market data(市場データ)など、具体的な作業内容を入れてみましょう。

“Just to be sure, should I hold off until I hear back from you, or is there any background work you’d like me to prioritize right now?”(念のため確認ですが、この件はフィードバックを待ってから動くべきでしょうか、それとも先に進めておくべきタスクなどはありますか?)

A – Assess possibilities(可能性を見極める)

ケビンの言葉を1つの意味(=待て)だけで捉えず、「自発的に動いてほしいのかもしれない」「実はやんわり断られているのかもしれない」と複数の可能性を視野に入れ、周りの状況や上司の忙しさを観察します。

P – Perform with insight(理解を持って行動する)

曖昧なまま放置せず、「私は〇〇の準備を進めます。何かあれば教えてください」と、自分の次のアクションをテキスト(Slackやメール、社内チャット)に残して、お互いの認識の合意(Calibration)を作ってから行動します。

SHAPE・LEAPは双方向

ここまで読み進めると、「日本人的な『空気を読む』を、今度はカナダ人相手に当てはめて考えなきゃいけないの!?」と大混乱してしまった方もいるかもしれません。

しかし、John Edward McGraw氏は、決して「日本人はこのように考えを改めるべきだ」「100%カナダ人の行動に合わせるべきだ」と言っているわけではありません。また、そもそもカナダには多様なバックグラウンドを持つ移民が多く、一元化することはできません。

マルチカルチャーな企業へセミナーやワークショップを提供しているJohn氏が最も伝えたかったのは、「双方が」LEAPのサイクルを回し、お互いの価値観のレンズを理解して歩み寄ることが大事だということです。

シチュエーション別!明日から使える「スマートなフレーズ集」

パターン①:仕事を任されたけれど、優先順位の判断に困る時(Delegationへの対応)

上司から新しいリサーチや資料作成などのタスクを頼まれた時。日本の感覚だと「分かりました!」とだけ言って引き受けてしまいがちですが、カナダでは「いつまでに、どのレベルの完成度を求めているか」をその場で確認し、自分の現在のタスクとの優先順位をすり合わせるのがデキる部下です。

スマートなLEAPフレーズの例:

I’d be happy to take that on. Since I’m currently working on the monthly report, would it be okay if I focus on this right after I finish that tomorrow morning?”
(喜んで引き受けます!今、月次レポートを進めているところなのですが、明日の朝にそれが終わり次第、こちらのタスクに集中する形でも大丈夫でしょうか?)

パターン②:フィードバックをもらった時(Feedbackへの解釈)

提出した資料や仕事の進め方について、上司から「次はもう少し〇〇した方がいいね」とアドバイスや指摘(フィードバック)をもらった時。ただ「I’m sorry」や「分かりました」で終わらせず、「ちゃんと理解した上で、次に向けて前向に進んでいます」という姿勢を見せるフレーズです。

スマートなLEAPフレーズの例:

“Thank you for the feedback. That makes total sense. I’ll definitely keep that in mind and apply it to the next project.”
(フィードバックをありがとうございます。完全に納得しました(よく分かりました)。次回は必ずその点を意識して進めます!)

むすび

カナダの職場は、多様なバックグラウンドを持つ人々が集まる場所だからこそ、お互いの「当たり前(レンズ)」が異なるのは当然です。だからこそ、予期せぬカルチャーギャップや誤解に直面したとき、それを個人の能力のせいにせず、言葉を交わしてすり合わせ、関係性を回復させていく(LEAP™)という視点が欠かせません。

日々の業務やコミュニケーションにおいて、お互いの価値観を言葉にしてすり合わせる「判断設計」を行うことこそが、多様なチームの中で強固な信頼関係を築く鍵となります。

ぜひ、上司の言葉や仕事の進め方にモヤッとしたら、「SHAPE」の物差しを思い出し、「LEAP」のステップで一歩踏み込んで質問してみてください。

MYNDSでは、皆さんがカナダの現地社会や職場で「自分らしく、自信を持って」活躍できるよう、これからも実践的なキャリア情報をお届けしていきます!

セミナー講師・監修者のご紹介

John Edward McGraw

John Edward McGraw (ジョン・エドワード・マグロウ)

所属: Hiyaku Coaching™ 代表 / The Intercultural Exchange™ 創設者
専門分野: 多文化ワークプレイス専門家 / インクルーシブ・コミュニケーション・スペシャリスト / ヒューマン・コネクション・スピーカー

■ 略歴・バックグラウンド

「文化的差異を戦略的強みに変える(Helping leaders turn cultural differences into strategic advantages)」をミッションに掲げる、カナダ・トロント在住の異文化ワークプレイス専門コーチ。

マルチカルチャー(多国籍・多文化)な職場環境におけるコミュニケーション設計やリーダーシップ開発、チームビルディングのワークショップを数多く手がける。これまでにTEDxのスピーカーとして2度の登壇経験を持つほか、その優れた活動から「2026 Workplace Leadership Award」を受賞。

日本企業や日本人ビジネスパーソンとの協働経験も豊富で、異なる文化的背景(レンズ)を持つ人々が互いに歩み寄り、最高のパフォーマンスを発揮するための実践的なフレームワーク(SHAPEやLEAP™など)を提供している。

公式ウェブサイト: johnedwardmcgraw.com

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